看護学校では、文化祭が学生の自主性や協働性を育む大切な行事の一つです。学生にとっては、日々の学びを形にして発表する貴重な機会となります。しかし、行事はやりっぱなしにせず、実施後の「振り返り」が重要です。今回は、看護教員として文化祭後に取り組みたい振り返りの方法と、次年度への活かし方についてまとめます。
振り返りの目的と重要性
文化祭後の振り返りは、次年度以降の行事改善や教育的成果の明確化につながる大切なプロセスです。特に看護教育においては、PDCAサイクルを活用した振り返りが重要です。以下にその目的と意義を整理します。
学生にとっての目的
目的 | 内容 |
成果の言語化 | 自分たちの取り組みの「何が良かったのか」「どこが工夫できたのか」を言語化することで、自信と学びにつながる。 |
課題の明確化 | 問題が起きた場面や改善点を共有することで、次回の行動に活かせる。 |
主体性の育成 | 振り返りを通じて、自ら考え、改善策を提案する力を養う。 |
教員にとっての意義
観点 | 内容 |
指導のふり返り | 学生への支援が適切だったか、教員の関わり方を振り返る材料となる。 |
学生の成長確認 | 学生がどのように計画・実行・修正を行ったかを見ることで、成長度を把握できる。 |
組織的な連携確認 | 教職員間での役割分担や情報共有の課題を把握し、今後の行事運営に役立てる。 |
教育的視点での意義(PDCAサイクルの活用)
段階 | 内容 | 振り返りとの関連 |
Plan(計画) | 目標設定、役割分担など | 次年度に向けて、より具体的な計画作成が可能になる |
Do(実行) | 実際の取り組み | 実施内容を振り返り、成功と課題を整理 |
Check(評価) | 成果と課題の分析 | アンケートやミーティングを通じて評価を実施 |
Act(改善) | 次への改善策の検討 | 改善点を次年度に引き継ぐ工夫を行う |
アンケート作成のポイントと具体例
文化祭後の振り返りにおいて、アンケートは学生や教職員、来場者の声を可視化する有効な手段です。適切に設計することで、成果と課題の両方を明らかにできます。
アンケート作成のポイント
ポイント | 内容 |
① 記述式と選択式を組み合わせる | 数値的な傾向を把握できる選択式と、具体的な意見を引き出す記述式を併用する。 |
② 対象者ごとに設問を調整する | 学生・教職員・来場者など、立場によって異なる視点を持つため、設問内容もそれに合わせて変更する。 |
③ ポジティブ・ネガティブ両方を尋ねる | 「よかった点」「課題に感じた点」の両面を問うことで、バランスの取れた評価と改善案が得られる。 |
アンケート設問の具体例(学生向け)
設問番号 | 内容 | 回答形式 |
1 | 文化祭に向けた準備期間の取り組みをどう評価しますか? | 5段階評価(とても良かった〜全くできなかった) |
2 | 特にうまくいったこと、工夫したことは何ですか? | 記述式 |
3 | 課題や改善点があれば教えてください。 | 記述式 |
4 | 他グループの展示で参考になったものは何ですか? | 記述式 |
5 | 今後、文化祭をよりよくするために取り入れたいアイデアがあれば教えてください。 | 記述式(自由記述) |
◆ 教員が注目すべき点
- 回答傾向に偏りがないか(例:「良かった」ばかりで課題が見えないなど)
- 回答者の立場に応じた意見の違い(学生と教職員、来場者の視点の違い)
- 記述式の回答から読み取れるキーワードや共通項
振り返りミーティングの進め方
文化祭後のアンケート結果を踏まえて、クラス単位や実行委員会単位での振り返りミーティングを実施することで、学生同士の情報共有や学びの深化が期待できます。以下は、その進行におけるポイントです。
ミーティング進行のポイント
観点 | 内容 |
① 学生主体の進行 | 司会進行を学生に任せることで、主体性やリーダーシップを育むことができる。教員はファシリテーター的に関わる。 |
② 話し合いの流れを明確にする | 「良かったこと」→「課題」→「改善策」という順序で意見を出すことで、感情的な議論を避け、建設的な対話につながる。 |
③ 安心して話せる環境づくり | 教員は、相手の意見を否定しない姿勢や、発言を促す声かけを意識し、発言しやすい雰囲気を支える。 |
◆ 教員の役割
- 冒頭で目的の共有:「この振り返りは、誰かを責めるためではなく、来年に活かすためのものです」と明確に伝える。
- 発言のサポート:意見が出にくいときは、「○○の場面はどうだった?」と具体的に問いかけてみる。
- 全体の整理:議論が拡散した際には、「今出ている意見は大きく分けて〇点です」などと整理し、話し合いをまとめる。
グループワーク形式の導入例
- 小グループに分かれ、付箋などを使って「良かった点」を出し合う
- 次に「課題点」を共有し、出た意見をホワイトボードに分類・整理
- 「改善策」を考える時間を設け、各班から全体へ発表
- まとめとして、教員が全体の意見を振り返り、次年度への引き継ぎ方法を確認
改善点の抽出方法と次年度に活かすための工夫
文化祭をより良いものにしていくためには、「何がうまくいかなかったか」だけでなく、「なぜうまくいかなかったのか」を客観的に見極める必要があります。改善点の抽出には、感想だけでなく事実やデータに基づいた分析が求められます。
改善点の抽出:3つの工夫
観点 | 工夫のポイント |
① アンケート記述をカテゴリ別に整理 | 内容を「運営」「準備」「連携」「展示内容」などのカテゴリに分けることで、問題の傾向を把握しやすくなる。Excelやスプレッドシートを活用すると効率的。 |
② 実行委員と一般学生の意見を比較 | 実行側と参加側の視点にはギャップが生まれやすいため、両者の意見を並列で検討し、改善に必要な視点のバランスをとる。 |
③ 「提案」は案として整理 | 「来年はこうしたい」「〇〇があればもっとよかった」という意見は、そのまま放置せず、具体的な改善案として記録しておく。 |
次年度に活かすための工夫
方法 | 内容 |
◎ 改善提案集の作成 | 抽出した改善点と提案を「改善提案集」として文書化する。実行委員ごとに担当を決めて作成してもよい。 |
◎ 次年度への資料配布 | 改善提案集は、次年度の文化祭企画時に新しい学生へ配布・共有する。スタート時点で前回の経験を参考にできる。 |
◎ データの電子化・共有 | GoogleドライブやOneDriveなどのクラウドを利用し、アンケート結果や振り返り記録を保存しておくと、教職員間での共有や年度を超えた引き継ぎがスムーズになる。 |
◆ 教員としての関わり
- データ整理の支援やツールの導入(表計算ソフトの活用指導など)
- 提案内容が現実的かどうかの助言
- 次年度の実行委員会へのスムーズな引き継ぎの橋渡し
記録の残し方と共有方法
文化祭の振り返りをきちんと記録に残すことは、次年度以降の学生や教員にとって非常に重要な「資産」となります。記録があることで、毎年の文化祭がより質の高い学びの場として発展していきます。
記録の形式と活用方法
形式 | 内容と活用例 |
活動報告書(PDF形式) | 実行委員会の構成、準備スケジュール、当日の流れ、成果と課題などをまとめた資料。印刷・配布も可能。 |
振り返りシート(Word / Googleドキュメント) | クラスやグループ単位での振り返りを記録。学生の感想や教員のコメントも含めて残すと、学びの深さが見える。 |
写真・動画 | 当日の様子を記録し、クラウド上(Googleドライブ、OneDriveなど)に保存。簡単なスライドやアルバムとして整理することで、後の発表や次年度の参考資料にも使える。 |
教員・職員間での共有方法
方法 | 内容 |
教職員会議での共有 | 実行委員担当教員が活動報告を行い、学生の取り組みや支援の成果、課題を全体で共有する。教育活動全体の改善にもつながる。 |
校内ポータル・共有フォルダ | 年度ごとに「文化祭記録フォルダ」を作成し、報告書・写真・振り返り資料を保存。過去の資料も参照できる体制を整える。 |
次年度への引き継ぎ資料として整理 | 実行委員引き継ぎミーティングで使用する資料として、必要な記録を抜粋しまとめておく。現行ファイルのフォーマットを引き継ぐことで継続的な記録が可能になる。 |
◆ 教員の支援ポイント
- 記録作成のテンプレートを用意(書き方の統一・効率化)
- データの整理やクラウド保存の方法を学生に指導
- 記録を評価の一部として取り入れる(「主体的な学び」として)
おわりに
文化祭は一過性の行事ではなく、学生の学びの過程を見守り、振り返る絶好の機会です。看護教員として、学生が達成感とともに次の目標へと向かえるよう、振り返りと改善活動を丁寧に支援していきましょう。

TUQRU(ツクル):HPより引用
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