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看護学生が参加したくなる授業の工夫|看護教員のための90分授業設計法

看護教員が日々思うこと:コラム

看護学生を教えていると、

「話しているのに反応が薄い」

「90分の講義が一方的になってしまう」

「グループワークを入れたいけれど、どう組み立てればいいか分からない」

といった悩みに直面することは少なくないと思います。

こうした悩みは、学生の集中力や意欲の問題というより、授業の「設計」の見直しどころが分かれば解決できることがほとんどです。この記事では、看護教員が明日からの授業ですぐに使えるレベルまで、授業のゴール設定・90分授業の組み立て方・学生参加型の活動・スライドの作り方・準備の効率化について具体的にまとめました。

この記事の目次
  1. この記事を書いた人
  2. 看護学生に伝わる授業とは?見直すべきは「学生」ではなく「授業の設計」
  3. 授業のゴールを決める|「教える内容」より「できるようになること」
  4. 90分授業の組み立て方【パターン別・タイムテーブル付き】
  5. 学生参加型の授業方法|看護授業で使える具体的な活動
  6. PowerPoint・配布資料の作り方|「シンプルに」を具体的に実践する
  7. 教員が話しすぎないための時間配分の考え方
  8. 授業準備を効率化する方法|毎回ゼロから作らないために
  9. 生成AIを授業準備に活用する(注意点つき)
  10. よくある授業の悩みと改善のヒント(Q&A)
  11. まとめ|次回の授業でまず試してみることチェックリスト

この記事を書いた人

看護教員の図書館

経歴:看護師歴7年 × 看護教員歴8年
・教員養成講習会 修了済み
・中央法規出版より2027年2月に新任看護教員向けの書籍を出版予定。
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テーマは、看護教員のための授業の作り方ガイドブック(仮)。

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看護学生に伝わる授業とは?見直すべきは「学生」ではなく「授業の設計」

「今の学生は集中力がない」「昔の学生の方が真面目だった」という話を耳にすることがありますが、これは学生個人の資質の問題というより、90分間座って話を聞き続けるという学習形態そのものが、誰にとっても負荷が高いということだと捉えると見通しが立てやすくなります。

学生を一括りに評価するのではなく、「学生が受け身にならない授業をどう設計するか」という視点に切り替えると、打てる手はかなり具体的になります。実際に授業への反応がよくなっている看護教員の授業には、共通する要素があります。

授業のゴールを決める|「教える内容」より「できるようになること」

授業準備で最初に決めるべきは、スライドの中身ではなく「この90分が終わったとき、学生に何ができるようになっているか」です。ここが曖昧なまま資料作りに入ると、情報を詰め込みすぎたり、逆に授業の軸がぼやけたりしがちです。

悪い例・良い例で見るゴール設定

✖悪い例(内容ベースのゴール)

  • 看護過程について学ぶ
  • ゴードンの11パターンを理解する

これは「教員が何を説明するか」であって、「学生が何をできるようになるか」ではありません。範囲が広く、評価もしづらいという弱点があります。

〇良い例(到達度ベースのゴール)

  • ゴードンの11パターンを使い、事例患者の情報を整理してアセスメントできる
  • アセスメント結果をもとに、優先順位を考えて看護診断を1つ以上立案できる
  • SOAP形式で経過記録を1件、時間内に作成できる

「できる/できない」で判断できる言葉にすると、授業内で使う活動(個人ワークなのかグループワークなのか)や、配る教材も自然と絞られてきます。

看護過程の授業を例にしたゴール設定の手順

  1. 授業前に、到達目標を3つ程度、動詞で終わる形(〜できる)で箇条書きにする
  2. スライドや配布資料の候補を並べ、ゴールに直結しない情報は思い切って削る、または補足資料に回す
  3. 授業冒頭の1〜2分で、その日のゴールを学生に伝える

この最初の1〜2分は省略されがちですが、「今日は何ができるようになる90分か」を先に伝えるだけで、学生が話のどこに注目すればよいか分かりやすくなります。

90分授業の組み立て方【パターン別・タイムテーブル付き】

「授業の組み立て方が分からない」「授業案をどう作ればいいか」という悩みに対しては、まず型を1つ持っておくことが近道です。ここでは基本の流れと、科目・単元に応じた4つのパターンを紹介します。

基本の流れ

多くの90分授業は、次の流れをベースに組み立てると学生が「聞く」「考える」「話す」「手を動かす」をひと通り経験できます。

  • 導入(学生の思考をその日のテーマに向ける)
  • ミニ講義(要点に絞った説明)
  • 個人で考える(問いに対して各自で書く・考える)
  • ペア・グループで共有(他者の考えと照らし合わせる)
  • 教員による解説(学生の反応を踏まえて補足する)
  • ケース演習(実際の事例で使ってみる)
  • 振り返り(今日できるようになったことを確認する)

すべての授業でこの7ステップをフルに使う必要はなく、科目の性質や単元の内容に応じて重みづけを変えるのが現実的です。

講義中心型のタイムテーブル例

新しい知識や概念を扱う単元(成人看護学の病態理解、老年看護学の加齢変化など)に向いています。

  • 導入:5分(本時のゴール提示、既習内容の確認)
  • ミニ講義①:20分
  • 個人で考える:5分(講義内容に関する問いに答える)
  • ミニ講義②:20分
  • ペアで共有:10分
  • 教員解説・補足:15分
  • 振り返り:15分(要点整理、次回予告)

講義の比重は大きいものの、20分ごとに「考える」「話す」を挟むことで、45分・90分と話し続ける組み立てより集中が続きやすくなります。

演習中心型のタイムテーブル例

看護技術演習、記録の書き方演習など、手を動かして身につける単元に向いています。

  • 導入・本時のゴール提示:5分
  • ミニ講義(要点・手順の確認):15分
  • 個人ワーク(アセスメントシート記入など):20分
  • グループワーク(内容の確認・相互チェック):20分
  • 教員による机間指導・全体へのフィードバック:15分
  • 発表またはケース共有:10分
  • 振り返り:5分

演習中心型は、教員が説明する時間よりも、学生が実際に手を動かし、教員がそれを見て回る時間の方が長くなるのが特徴です。

ケーススタディ型のタイムテーブル例

成人看護学・老年看護学・精神看護学などで、事例をもとに考えさせたい単元に向いています。

  • 導入:5分(事例の概要提示)
  • ミニ講義:15分(アセスメントに必要な知識の確認)
  • 個人で考える:10分(事例に対する初見のアセスメント)
  • グループで共有・議論:25分
  • 各グループの発表:15分
  • 教員による解説・補足:15分
  • 振り返り:5分

グループでの議論と発表に多くの時間を割くのがポイントです。教員は「正解を教える人」ではなく、「学生の思考を引き出し、整理する人」という役割に回ります。

看護技術演習型のタイムテーブル例

基礎看護学の技術演習(体位変換、清潔ケア、バイタルサイン測定など)に向いています。

  • 導入・本時の到達目標提示:5分
  • デモンストレーション(教員による手技提示):15分
  • 個人練習・ペア練習:30分
  • 教員による個別チェック・フィードバック:25分
  • 相互評価(学生同士でチェックリストを使って確認):10分
  • 振り返り:5分

技術演習は「見る」「やってみる」「フィードバックを受ける」のサイクルを1コマの中で複数回まわせるかどうかが鍵になります。

領域別の使い分けヒント

  • 基礎看護学・看護技術演習:デモンストレーション+個人/ペア練習+相互評価の技術演習型が向いています。
  • 成人看護学・老年看護学:病態や加齢変化の理解にはミニ講義中心、術後看護や生活支援にはケーススタディ型が組み合わせやすいです。
  • 小児看護学・母性看護学:発達段階やライフイベントごとの違いを扱うため、事例比較を個人→グループの順で考えさせる流れが使いやすいです。
  • 精神看護学:ロールプレイや対人関係の演習を取り入れると、コミュニケーションの型を体験的に学べます。
  • 在宅看護論:生活の場をイメージしやすいよう、動画や写真を使った事例提示+グループでの生活支援計画の検討が向いています。
  • 看護過程の授業:個人でのアセスメント→グループでの照らし合わせ→教員解説という流れが基本形として使いやすいです。
  • 国家試験対策:クイズ形式や小テストを短時間で繰り返し挟み、知識の定着を確認しながら進める組み立てが向いています。

学生参加型の授業方法|看護授業で使える具体的な活動

「学生に考えさせる」だけでは進め方が曖昧になりがちです。ここでは代表的な活動ごとに、向いている場面と具体的な進め方を整理しました。

個人ワーク

向いている場面:知識の整理、事例に対する初見の考えを引き出したいとき。

進め方の例:問いを1つ提示し、3〜5分でノートやワークシートに書かせる。「なんとなく分かった気になる」状態を防ぐために、書く・言語化するステップを挟みます。

ペアワーク

向いている場面:発言のハードルを下げたいとき、全員に発言の機会を作りたいとき。

進め方の例:個人ワークの直後に、隣同士で1〜2分ずつ説明し合う。人数が少ないぶん、大人数のグループより発言しやすい学生が多いです。

グループワーク

向いている場面:事例検討、看護計画の立案など、複数の視点をすり合わせたいとき。

進め方の例:4〜5人を基本に、役割(進行・記録・発表など)を決めておくと、特定の学生だけが作業する状態を避けやすくなります。所要時間の目安を提示しておくことも大切です。

ケーススタディ

向いている場面:成人看護学・老年看護学・精神看護学など、実際の患者像に近づけて考えさせたいとき。

進め方の例:個人でアセスメント→グループで意見交換→代表グループが発表→教員が解説、という流れが基本形として使いやすいです。

ロールプレイ

向いている場面:患者対応、コミュニケーション、精神看護学の面接場面など。

進め方の例:患者役・看護師役・観察役に分け、3分程度の短い場面を演じさせたあと、観察役からのフィードバックを共有する時間を必ず設けます。

クイズ形式

向いている場面:国家試験対策、知識確認、授業の導入や振り返り。

進め方の例:3〜5問程度を各コマの冒頭や終盤に挟み、正誤だけでなく「なぜそう考えたか」を軽く共有させると、知識の定着につながりやすくなります。

発表・相互評価

向いている場面:グループワークやケーススタディのまとめ、アセスメントシートの確認。

進め方の例:グループ間でシートを交換し、チェックリストに沿って相互評価させる。教員が全グループを個別に見る時間がない場合にも取り入れやすい方法です。

振り返り(リフレクション)

向いている場面:どの授業形態でも、授業の最後に。

進め方の例:「今日学んだことを90秒で説明する」という時間を設け、隣の学生に話す、あるいは一言メモに書く。説明しようとすることで、理解が曖昧な部分に学生自身が気づけます。

PowerPoint・配布資料の作り方|「シンプルに」を具体的に実践する

1スライド1メッセージを徹底する

1枚のスライドに複数の主張を詰め込むと、学生はどこを見ればいいか分からなくなります。伝えたいことが2つあるなら、スライドも2枚に分けるくらいの感覚がちょうどよいです。

文字を詰め込みすぎないためのコツ

  • 1スライドの文章は箇条書きで3〜5行程度を目安にする
  • 文章そのものではなく、キーワードと矢印で流れを示す
  • 詳しい説明は配布資料に回し、スライドには要点だけを残す

図解・イラスト・動画の使いどころ

病態生理や手技の手順など、言葉だけでは伝わりにくい内容には、図解や短い動画(3分以内が目安)が効果的です。CanvaやYouTubeなどの無料・低コストのツールでも十分対応できます。動画は「見せて終わり」にせず、視聴後に「今の手順で注意すべき点は?」と問いを添えると、視聴が受け身で終わりにくくなります。

学生が書き込める余白をつくる

配布資料に空欄や記入欄を用意しておくと、学生は「聞くだけ」ではなく「書き込みながら参加する」状態になります。穴埋め形式のアセスメントシートや、図に自分で書き込ませる形式は、看護過程やフィジカルアセスメントの授業と特に相性がよい方法です。

スライドと配布資料の役割を分ける

スライドは「その場で理解を助けるための視覚ツール」、配布資料は「あとで見返して学習するための資料」と役割を分けて考えると、スライドに文字を詰め込みすぎる問題が起きにくくなります。

教員が話しすぎないための時間配分の考え方

90分間ずっと教員が説明を続けると、学生は聞くことに疲れてしまいます。目安として、「教員が説明する時間」「学生が考える時間」「学生同士で話す時間」「学生がアウトプットする時間」の4つを意識して配分すると、聞くだけの時間に偏りにくくなります。

比率や分数を絶対的なルールとして固定する必要はありません。単元の内容や学生の理解度によって、講義を厚めにする回、演習を厚めにする回があってよいのです。大切なのは、「今日はどのバランスで組み立てるか」を授業準備の段階で意識して決めておくことです。

授業準備を効率化する方法|毎回ゼロから作らないために

看護教員は授業以外にも、実習指導や書類業務など業務量が多く、授業準備にかけられる時間には限りがあります。効率化の鍵は「ゼロから作らない仕組み」を持つことです。

過去資料を活かす

過去に使った資料をベースに、統計データやガイドラインなど最新情報が必要な部分だけを差し替える形にすると、毎回の作業量を大きく減らせます。

授業テンプレートを作る

「導入→ミニ講義→個人ワーク→共有→解説→演習→振り返り」といった構成そのものをテンプレート化しておくと、次の授業では中身を入れ替えるだけで準備が進みます。スライドのフォーマット(表紙・見出し・図解パターン)も同様にテンプレート化しておくと、デザインで悩む時間を減らせます。

授業準備のルーチン例(4日間モデル)

  • 1日目:授業のゴールを3つ決める
  • 2日目:スライドと配布資料の骨組みを作る
  • 3日目:クイズ・演習・ケース教材を準備する
  • 4日目:時間配分の確認、リハーサル

一度この型を作っておくと、2回目以降は同じ流れで進められるため、準備にかかる時間が徐々に短縮されていきます。

生成AIを授業準備に活用する(注意点つき)

近年は、授業準備に生成AIを取り入れる看護教員も増えてきました。うまく使えば、次のような場面で準備時間の短縮につながります。

  • 授業の構成案やタイムテーブルのたたき台を出させる
  • 練習用のケース事例の草案を作らせる
  • 小テストやクイズの問題案を作らせる
  • スライド構成(見出しや流れ)を整理させる
  • 配布資料の下書きを作らせる

ただし、生成AIが出力した医学的な内容(疾患の説明、数値、ガイドラインの記載など)は、そのまま授業で使わず、必ず教員自身が最新の文献やガイドラインと照らし合わせて確認してください。AIの出力はあくまで「たたき台」であり、医学的な正確性・最新性の担保は教員の役割です。

よくある授業の悩みと改善のヒント(Q&A)

Q. 学生が授業を聞いてくれません。 A. 聞くだけの時間が長すぎないか、まず時間配分を見直してみてください。20分に一度は「考える」「話す」を挟むと、聞く姿勢が続きやすくなります。

Q. 学生の反応が薄いです。 A. 発言の機会が「いきなり全体の前で」になっていないか確認してみてください。個人で書く→ペアで話す→全体で共有、という段階を踏むと、発言までのハードルが下がります。

Q. 90分の講義が一方的になってしまいます。 A. 講義中心型のタイムテーブル例のように、20分の講義ごとに個人ワークやペア共有を挟むだけでも、一方通行の時間を減らせます。

Q. グループワークや演習をどう取り入れればいいか分かりません。 A. まずは1コマの中に1つだけ、グループワークかケーススタディを試してみるのがおすすめです。役割分担と所要時間を先に提示しておくと進行がスムーズになります。

Q. PowerPointの作り方に悩んでいます。 A. 「1スライド1メッセージ」「文章より矢印・キーワード」の2点だけを意識するだけでも、スライドは大きく変わります。

Q. 授業準備に時間がかかります。 A. 過去資料の流用と、授業構成のテンプレート化から始めてみてください。ゼロから作る回を減らすことが、時短への一番の近道です。

まとめ|次回の授業でまず試してみることチェックリスト

すべてを一度に変える必要はありません。次の中から1つだけ選んで、次回の授業で試してみてください。

  • 授業開始時に、その日のゴールを「〜できる」という形で学生に伝えてみる
  • 講義20分ごとに、個人で考える時間を5分挟んでみる
  • グループワークの前に、個人で書く時間を必ず作ってみる
  • スライド1枚につき、メッセージを1つに絞ってみる
  • 授業の最後に「今日学んだことを90秒で説明する」時間を作ってみる
  • 今回使った授業構成を、次回にも使えるようテンプレートとして残しておく

小さな工夫の積み重ねが、学生が受け身から一歩踏み出す授業につながっていきます。看護教育に関する情報や教材づくりのヒントは、看護教員の図書館【note版】でも取り上げていますので、あわせて参考にしてみてください。

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