
「授業案を作ろうと思ったけれど、どこから手をつければいいのか分からない」
「先輩の授業案を見よう見まねで真似しているけれど、これで合っているのか自信が持てない」
「毎回の授業案を一から考えるのに時間がかかってしまう」
そんな悩みを抱えている看護教員の方は、少なくないのではないでしょうか。
特に、着任したばかりの先生や、初めて担当する科目を持つことになったタイミングでは、こうした迷いが大きくなりがちです。
この記事では、看護教員が授業案を作るときに何を考えて、どの順番で書いていけばよいかを、実際の授業準備の流れに沿って具体的に解説します。あわせて、ここで紹介する項目をそのまま使える無料のWordテンプレートもご用意していますので、記事を読みながら、次の授業案作成にすぐ役立てていただけます。
授業案のテンプレート(Wordダウンロード)
この記事を書いた人
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テーマは、看護教員のための授業の作り方ガイドブック(仮)。
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授業案とは|何のために作るのか
授業案は、1回の授業をどう進めるかを整理した設計図です。目的・目標、授業の流れ、教材、評価方法などを事前に言葉にしておくことで、当日の授業を落ち着いて進められます。
授業案がないまま授業に臨むと、話したいことを話しているうちに時間が足りなくなったり、演習の指示が学生にうまく伝わらなかったり、伝えるつもりだったポイントを言い忘れてしまったりすることが起こりやすくなります。特に、講義と演習を組み合わせる授業や、グループワークを取り入れる授業では、進行の見通しを立てておかないと、時間配分が大きく崩れてしまいます。
シラバスが科目全体の設計図だとすれば、授業案はその中の1コマを具体化したものです。シラバスに書かれた到達目標や授業計画と矛盾しないよう、授業案もシラバスとのつながりを意識して作成する必要があります。授業案の書き方に絶対的な正解はありませんが、押さえておきたい「考える順番」はあります。
授業案を作る前に確認しておきたいこと
シラバスと授業回数の中での位置づけを確認する
今回の授業が科目全体の中で何回目にあたるのか、シラバスのどの到達目標に対応しているのかを確認します。シラバスには、その科目で最終的に評価する方法(筆記試験、レポート、実技試験など)も書かれているはずです。今回の授業がその評価にどうつながるのかを意識しておくと、授業内で扱う内容の深さや、演習に割く時間の判断がしやすくなります。
前後の授業内容も確認しておきましょう。前回はどこまで扱ったのか、次回は何を扱う予定なのかが分かっていないと、同じ内容を重複して説明してしまったり、逆に必要な前提知識を説明しないまま授業を進めてしまったりすることがあります。担当が自分一人でない科目の場合は、他の担当教員に前回の授業内容を確認しておくと安心です。
対象学生の学年と既習内容を確認する
同じテーマでも、対象が1年生か3年生かで、授業内容や難易度は大きく変わります。基礎看護学を学び終えているか、関連する専門科目をすでに履修しているかによって、授業で説明すべき範囲も変わってきます。
既習内容を確認する方法としては、その学年が使用している教科書の目次を見る、前年度の担当教員に確認する、学生がすでに経験した臨地実習の内容を確認する、といった方法があります。特に、臨地実習を経験済みかどうかは、事例をどこまでリアルに設定できるかに関わってくるため、確認しておく価値があります。
今回の授業で学生に何を持ち帰ってほしいかを考える
細かい項目を決める前に、「この授業が終わったとき、学生にどうなっていてほしいか」を、一度自分の言葉にしておきます。
たとえば「COPD患者の呼吸困難を軽減するための看護技術を、根拠を持って説明できるようになってほしい」のように、一文で言えるくらいまで絞り込んでおくと、この後の目標設定や内容の取捨選択がぶれにくくなります。
ここが曖昧なまま次のステップに進んでしまうと、授業内容を詰め込みすぎたり、逆に核心に触れないまま授業が終わってしまったりすることがあります。
看護 授業案の作り方|考える順番と書く項目
STEP1 授業目標を決める(知識・技術・態度)
授業目標は、学生が授業後に「何ができるようになっているか」を表すものです。看護教育では、知識・技術・態度の3つの観点で整理すると具体化しやすくなります。
目標を書くときのコツは、「理解する」「学ぶ」のような、達成したかどうかが判断しにくい表現で終わらせないことです。「説明できる」「実施できる」「判断できる」のように、授業の最後に確認できる形で書いておくと、後で評価方法を考えるときにも迷いません。
例1(COPD患者の呼吸管理をテーマにした場合)
- 知識:COPD患者の病態と、呼吸困難が日常生活に与える影響を説明できる
- 技術:口すぼめ呼吸や腹式呼吸の方法を、患者に分かりやすく説明できる
- 態度:患者の生活背景を踏まえ、無理のない自己管理方法を一緒に考える姿勢を持つ
例2(認知症患者のBPSDへの対応をテーマにした場合)
- 知識:BPSDが生じる背景要因(身体的要因・環境要因・心理的要因)を説明できる
- 技術:事例をもとに、BPSDの背景要因をアセスメントし、ケア計画の案を立てられる
- 態度:患者の言動を「問題行動」としてではなく、本人なりの意味があるものとして捉えようとする姿勢を持つ
新任の先生が特につまずきやすいのが、この3つを全部盛り込もうとして目標が多くなりすぎることです。1回の授業で扱う目標は、知識・技術・態度それぞれ1〜2個程度に絞ったほうが、その後の内容や評価も組み立てやすくなります。
STEP2 授業の展開を考える(導入・展開・まとめ)
授業目標が決まったら、授業全体を「導入」「展開」「まとめ」の3つに分けて、大まかな流れと時間配分を考えます。
90分の授業を例にすると、導入10分、展開65〜70分、まとめ10〜15分が目安になります。展開の中に技術演習を入れる場合は、モデルの準備や後片付けにかかる時間も忘れずに見込んでおきましょう。
演習の指示や手技のデモンストレーションは、思っている以上に時間がかかることが多いため、初めて扱うテーマのときは特に、余裕を持たせておくことをおすすめします。
STEP3 学生の活動と教員の活動を組み立てる
展開部分をさらに具体化する際は、教員が何をするかだけでなく、学生が何をするかもあわせて考えます。講義だけで進めるのか、演習やグループワークを取り入れるのかによって、必要な準備も変わってきます。
看護の授業でよく使われる活動には、次のようなものがあります。
たとえば、口すぼめ呼吸の指導場面であれば、
- 教員が手本を示しながら手順を説明する(5分)
- 学生同士でペアになり、患者役・看護師役に分かれて練習する(10分)
- 数組に前で実演してもらい、全体でポイントを確認する(5分)
のように、教員の動きと学生の動きを対にして時系列で書き出しておくと、当日の進行がイメージしやすくなります。
新任の先生にありがちなのが、教員が説明する時間を短く見積もりすぎることと、逆に学生の演習時間を短く見積もりすぎることです。特に初めて扱うテーマでは、学生の理解に時間がかかることを見越して、演習時間にはあらかじめ余裕を持たせておくと安心です。
STEP4 教材を準備する
授業内容と活動が決まったら、それに合わせて教材を準備します。看護の授業では、次のような教材を組み合わせることが多くあります。
教材は種類を増やすことが目的ではありません。今回の授業目標を達成するためにどの教材が必要かという視点で選ぶと、準備の負担を減らしながら、授業の質を保つことができます。
STEP5 時間配分を決める
展開・活動・教材がある程度固まったら、それぞれに具体的な時間を割り振ります。90分の授業であれば、次のような配分が一つの目安になります。
- 導入:10分(問いかけ・本時の目標確認)
- 展開1:20分(講義形式での知識提示)
- 展開2:30分(事例を使ったグループワーク)
- 展開3:15分(グループごとの発表・全体共有)
- まとめ:15分(要点の振り返り・次回予告)
時間配分は、実際に授業をしてみると計画通りにいかないことも多いものです。特にグループワークやディスカッションは、学生の様子によって時間が伸びやすい部分です。最初から分単位で細かく決めすぎず、展開の後半や演習部分には数分の余裕を持たせておくと、当日進行しやすくなります。
STEP6 評価方法を決める
最後に、学生の理解度や到達度をどう確認するかを決めます。評価は、授業中に行う形成的評価と、授業後に行う総括的評価に分けて考えると整理しやすくなります。
- 形成的評価:演習中の様子、発言、グループワークでの取り組みなど、授業の中で確認できるもの。たとえば、事例演習であれば「アセスメントの根拠を、患者の情報と結びつけて説明できているか」を歩きながら確認する、といった形です。
- 総括的評価:ワークシートの提出内容、レポート、チェックリストなど、授業後に確認するもの。技術演習であれば、チェックリストに沿って手順の抜け漏れを確認する方法がよく使われます。
評価方法は、STEP1で決めた授業目標と対応させておくことがポイントです。「患者に説明できる」ことを目標にしたのであれば、評価も学生が実際に説明する場面を見て判断する、というように、目標と評価の手段を揃えておくと、授業案としての一貫性が保たれます。
目標は技術面なのに評価はペーパーテストのみ、というように目標と評価の種類がずれてしまうと、本当に身についたかどうかを確認できなくなってしまいます。
新任看護教員が特につまずきやすいポイント
目標を欲張りすぎてしまう
「あれも伝えたい、これも身につけてほしい」という思いから、1回の授業に目標を詰め込みすぎてしまうことがあります。
目標が増えるほど、授業内容も評価方法も複雑になり、結果として1つ1つが中途半端になりがちです。今回の授業で本当に持ち帰ってほしいことを、思い切って絞り込む勇気も必要です。
講義の時間を長く見積もりすぎる
伝えたいことが多いと、つい講義の時間を長く取ってしまいがちです。しかし、看護の授業で本当に理解を定着させたいのは、演習やディスカッションを通して学生自身が考える時間です。講義はポイントを絞って短めに設計し、その分を演習に回すという発想を持っておくと、授業全体のバランスが取りやすくなります。
演習時間を短く見積もりすぎる
教員自身にとっては簡単な手技でも、学生にとっては初めて手を動かす内容です。説明を聞いてすぐにできるわけではないため、演習時間は想定より多めに確保しておくと、当日慌てずに済みます。
授業後の振り返りも授業案の一部に
授業案は、授業前の準備だけでなく、授業後の振り返りに使うことで、次回以降の授業の質を高めるツールにもなります。
これらを授業案に簡単にメモしておくだけでも、次に同じテーマを扱うときの準備時間を大きく短縮できます。数回分たまってくると、自分がどのテーマで時間配分を誤りやすいか、どんな説明でつまずきやすいかという傾向も見えてくるようになります。
まとめ|授業案は考える順番を型にすると書きやすくなる
授業案には決まった書き方があるわけではありませんが、
「シラバスと学生の確認 → 目標 → 展開 → 活動 → 教材 → 時間配分 → 評価」
という考える順番を押さえておくと、迷わず作成できるようになります。目標と評価をセットで考えること、演習時間には余裕を持たせることの2点は、特に意識しておくと授業案の完成度が上がります。
今回ご紹介した項目は、そのまま使える無料のWordテンプレートにもまとめています。授業案を一から作る手間を省きたいときや、項目の抜け漏れを確認したいときに活用してみてください。
また当サイトでは、シラバスの作成方法や評価ルーブリックの作り方、授業スライドの作り方についても紹介しています。授業案とあわせて、授業準備全体の効率化にお役立てください。

