看護専門学校では、今も多くの学校で制服が採用されています。「看護師らしく見える」「規律が保てる」といった理由で支持される一方、教員や学生からは制服に対する疑問や負担の声も聞かれます。
本記事では、現場の教員の視点から「制服は本当に必要なのか」を検討し、制服は不要であると考える理由を具体的に解説します。
この記事の目次
看護専門学校で制服を導入するメリット

看護専門学校において制服が導入される背景には、いくつかの教育的・運営的な理由があります。代表的なメリットを整理すると以下のとおりです。
看護師らしさを意識させる
- 制服を着ることで「看護の道に進んでいる」という意識を高めることができる。
- 白衣を着用する実習前の段階として、看護師になる自覚を促す役割がある。
- 特に入学直後の学生にとっては、モチベーションの向上につながりやすい。
学校全体の統一感を出す
- 制服をそろえることで、校内に一体感や規律が生まれる。
- 外部から見たときにも「きちんとした学校」という印象を与えやすい。
- 集団行動を求められる看護教育において、秩序維持の効果があるとされる。
服装トラブルを防ぐ
- 特に臨地実習先や地域住民から見られる場面で、安心感や信頼感を持たれやすい。
- 私服だと「清潔感がない」「露出が多い」といったトラブルが発生することがある。
- 制服を導入することで、服装に関する注意や指導の手間を減らせる。
制服が不要と考える理由


ナビ先生
制服を導入すると、学生が制服を正しく着用していない場合、教員が指導を行わなければならず、その結果、教員に新たな負担が生じているという現状があります。
ただでさえ忙しいのに、余計な仕事増やさないでほしいと思いますよね。
経済的・手間的な負担が大きい
- 入学時にかかる制服代は 数万円〜10万円近く に及ぶこともあり、家庭にとって大きな経済的負担となる。
- 学生によっては、アルバイトをして自分で費用を工面するケースも少なくない。
- 制服は「着るだけで楽」に見えるが、実際には日々の洗濯・アイロンがけ・クリーニングが必要。
- 汚れや破損に備えて 複数セットを購入 しなければならず、費用も手間もかさむ。
個性や自由を奪う矛盾
- 看護教育では「多様性の尊重」「その人らしさを大切にするケア」を学生に教えている。しかし現実には、画一的な制服を強制することが学生の個性を認めない矛盾につながる。
- 服装で自己表現する自由を奪うことは、学生生活のモチベーション低下にもつながる。
規律やプロ意識は制服で育たない
- 制服を着ていても、必ずしも礼儀や規律を守れるわけではない。
例:時間にルーズな学生、校則を破る学生は制服の有無に関係なく存在する。 - 真のプロ意識は「制服に頼る」のではなく、 自らTPOに合った服装を考えて選ぶ経験 によって育つ。
- 社会に出てからは職場のユニフォームが支給されるため、学生時代はむしろ「自由な中で責任を持つ力」を養うべき。
実習ではすでにユニフォームがある
- 校内で制服を導入してまで「看護師らしさ」を演出する必要はなく、むしろ 白衣の特別感や重みを薄めてしまう可能性 がある。
- 看護専門学校の特徴として、 臨地実習時には白衣を着用する。
- そのため、看護師としての「プロの服装体験」は実習で十分に積むことができる。
学生の声から見える制服の現実

実際に指導している看護学生からは、制服に対して次のような声が多く聞かれます。
- 「通学のときに制服は恥ずかしい」
電車やバスの中で注目されることに抵抗を感じる学生も多い。 - 「夏場は暑くて不快」
特にポリエステル素材の制服は通気性が悪く、熱中症リスクにもつながる。 - 「私服の方が気分転換になる」
勉強や実習で忙しい中、好きな服を着ることでリフレッシュできる。 - 「面接やアルバイトに行くとき、制服では行きにくい」
進学や就職活動、日常生活のシーンで制服が不便に感じられる。
このように、制服の導入は学生にとって 生活面やモチベーションにマイナスの影響 を及ぼす場合があります。
まとめ|制服は不要の時代へ
看護専門学校における制服は、かつての価値観に基づく制度であり、現代の教育現場に本当に必要なのか再考する時期に来ています。
制服が不要と考えられる主な理由は以下のとおりです。
- 経済的・手間的な負担が大きい
- 個性や自由を尊重する教育方針と矛盾する
- 規律やプロ意識は制服では育たない
- 実習でのユニフォーム体験で十分
学生の自由と成長を尊重するならば、制服は不要です。もちろん学校や地域の文化によって事情は異なりますが、「なぜ制服を着せるのか?」を問い直すこと自体が教育にとって重要 だといえます。