科目名:成人援助論Ⅰ(呼吸機能障害の看護)
科目の概要(Purpose)
本講義では、成人期にみられる代表的な呼吸器疾患である肺炎・肺がん・慢性閉塞性肺疾患(COPD)を中心に取り上げ、病態生理、診断、治療(内科的・外科的療法)、および看護援助のあり方を学ぶ。呼吸機能のアセスメントや呼吸療法の基礎、急性期から慢性期における看護の視点を身につけることを目的とする。
到達目標(Objectives)
この講義を通じて、学生は以下のことができるようになる:
- 呼吸器疾患(肺炎・肺がん・COPD)の病態・原因・症状を説明できる
- 呼吸器疾患に対する内科的・外科的治療法を理解し、看護の視点から説明できる
- 呼吸機能のアセスメント(SpO₂、呼吸数、呼吸音、ABGなど)を理解し、必要な看護援助を考察できる
- 呼吸器疾患患者の急性期・慢性期における看護のポイントを説明できる
- 呼吸リハビリテーションや在宅療養支援に関する基本的知識を身につける
講義内容
第1回:呼吸器の構造と機能、呼吸アセスメントの基本
- 呼吸器の構造:肺、気管支、胸膜の位置と役割
- 呼吸の生理:換気・拡散・灌流の仕組み
- 呼吸アセスメント:
- 呼吸数の正常値と異常
- SpO₂(経皮的酸素飽和度)の評価
- 呼吸音(正常・異常)の聴取方法
- 観察の視点:
- 努力呼吸の有無(肩呼吸・鼻翼呼吸)
- チアノーゼの有無(口唇・爪床)
- 呼吸補助筋の使用
- 呼吸困難時の体位の工夫(前かがみ、三脚位など)
第2回:呼吸器疾患の診断に用いられる検査
- 胸部X線・CT検査:肺野の陰影や浸潤影の読み取りポイント
- 喀痰検査:菌の種類や薬剤感受性の確認
- 血液ガス分析(ABG):
- pH、PaCO₂、PaO₂、HCO₃⁻の正常値と異常の意味
- 呼吸機能検査(スパイロメトリー):
- FEV₁、FVC、%FEV₁の見方
- 検査前後の看護援助:
- 前処置(禁煙、絶飲食の指示など)
- 検査後の安静・合併症の観察
第3回:肺炎の原因・病態・症状と治療
- 肺炎の分類:市中肺炎、院内肺炎、誤嚥性肺炎
- 主な原因菌:肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、MRSAなど
- 症状:発熱、湿性咳嗽、膿性痰、呼吸困難
- 治療:
- 抗菌薬の種類(ペニシリン系・マクロライド系など)と投与経路(経口・点滴)
- 酸素療法の導入基準と方法
- 栄養管理と安静の重要性(高カロリー食、経口摂取の可否など)
第4回:肺炎の看護援助
- 呼吸困難時の体位調整(セミファウラー位、体位交換)
- 呼吸ケア:
- 吸引のタイミング・方法
- 体位ドレナージの目的と手順
- 口腔ケア:誤嚥性肺炎予防のための清潔保持
- 感染対策:標準予防策・飛沫感染対策の実践
- バイタルサイン変化への対応:熱発、頻呼吸、SpO₂低下時の初期対応
第5回:COPDの定義・病態・治療
- COPDとは:慢性的に気流が制限される疾患(肺気腫+慢性気管支炎)
- 喫煙との関連:リスク因子としての重要性
- 慢性期 vs 急性増悪期の違い
- 治療:
- 吸入薬の種類(β2刺激薬、ステロイドなど)と使用方法(スペーサーの使用)
- 在宅酸素療法(HOT)の導入基準と看護
第6回:COPD患者の生活支援とセルフマネジメント
- 呼吸困難時のADL支援:動作と呼吸を合わせた援助(例:階段昇降時の口すぼめ呼吸)
- 呼吸リハビリ:
- 口すぼめ呼吸、腹式呼吸、排痰法(ハフィングなど)
- 禁煙指導:ニコチンパッチ・ガムの使用、動機づけ面接法の活用
- 在宅療養支援:
- HOTの在宅管理、環境整備
- 受診や服薬管理の支援
第7回:肺がんの分類・病期と治療
- 肺がんの分類:非小細胞がん(腺がん・扁平上皮がん)、小細胞がん
- TNM分類によるステージングと治療の選択肢
- 治療法:
- 外科的切除、放射線治療、化学療法、分子標的治療の特徴
- 告知と心理的支援:患者の意思決定支援、家族との連携
第8回:肺がん患者への看護
- 疼痛アセスメントと緩和ケアの基本
- 化学療法・放射線療法の副作用への対応:
- 嘔気、脱毛、白血球減少時の感染予防
- 食欲不振・倦怠感への対応:
- 栄養補助食品の活用、小分け食の工夫
- QOLを重視した支援:
- 患者の希望を尊重したケアの提供、スピリチュアルケア
第9回:外科的治療と周術期の看護援助
- 手術の種類:開胸術、胸腔鏡下手術の違いと適応
- 術後管理:
- 呼吸状態の観察(無気肺・肺炎の予防)
- 胸腔ドレーンの管理(排液量・エアリークの確認)
- 疼痛コントロール(PCA・内服薬)
- 早期離床・リハビリの重要性
- 合併症予防:深部静脈血栓症、感染症の早期発見と対応
第10回:ケーススタディとまとめ
- 肺炎・COPD・肺がんの事例をもとに:
- 病態・症状・治療の整理
- アセスメント項目(SpO₂、呼吸数、苦悶表情など)
- 看護援助の選択(体位、呼吸ケア、セルフケア支援)
- 個人またはグループワークで考察
- 振り返りを通じて、臨床実習での観察視点・行動目標を明確にする
<ご注意>
教材の目的と活用方法について
本教材は、授業の「幹」となる設計を目的としており、貴校のカリキュラムや学習レベルに応じたアレンジを推奨しています。具体的には、スライドや板書の追加、発問の工夫など、先生ご自身の教育スタイルに合わせてご活用いただけます。
AIツールを活用した資料作成について
本資料は、AIツールを活用して初稿を作成し、その後、看護教員としての経験や視点を反映させながら調整を加えています。効率化と質の両立を目指し、忙しい現場の先生方が実際に使用できる形に整えました。使用前に、内容やエビデンスをご確認いただき、授業内容に合わせた最終的な調整を行ってください。
商用利用の禁止
本教材は、商用目的での利用を禁止しています。教育現場での授業や学習支援を目的にご利用いただくことを推奨します。
【免責事項】
正確性と最新性の確認
本教材の内容には最大限の注意を払っておりますが、医学的・看護学的な情報は進展する可能性があります。最新のガイドラインや文献を参照し、実際の授業運営においては適宜確認・修正を行ってください。